為替手形の一種に、自己宛為替手形と自己受為替手形があります。名前は似ていますが、利用する状況が全然違います。一つ一つ見ていきましょう。
この2つは簿記3級の範囲なのですが、自己宛為替手形が出てくるのは簿記2級で学習する本支店会計がほとんどですから、簿記2級で出題されます。仮に簿記3級で出題された場合、難問ですから解けなくても合否に関係ありませんので、3級受験生は覚えなくて大丈夫です。2級を受験する方で余裕がある人は覚えておきましょう。
自己宛為替手形(じこあてかわせてがた)
支店長であるミホさんから電話がかかってきました。
どうしたの?ミホさん。
支店はお金がないので自己宛為替手形を振り出しますね!本店で為替手形を引き受けてください!
じこあてか…何それ?
自己宛為替手形とは、支店が為替手形を振り出し、本店が支払いを引き受けるものです。
支店が仕入先へ支払をしなければいけないとき、為替手形を振り出して本店に引き受けてもらうことで、本店に代わりに支払ってもらうことができます。
支店が自己宛為替手形を振り出し、本店がそれを引き受けた場合、仕訳で見ると次のようになります。
支店の買掛金が消え、本店に支払手形が発生していることがわかります。
<支店の仕訳>
買掛金 100 / 本店 100
<本店の仕訳>
支店 100 / 支払手形 100
この取引を会社全体で見ると、仕入先に支払手形を渡しただけの取引になります。名宛人が自社内にいるということで自己宛為替手形と呼ばれます。
自己受為替手形(じこうけかわせてがた)
ど、どうしよう…
違うよ~。お客さんが売掛金200円を払ってくれないんだよ~。
当社が振り出し、当社が受け取る為替手形を自己受為替手形といいます。
自己宛為替手形を使うと、売掛金を受取手形に変えることができます。
お客さんが売掛金(お客さんにとっては買掛金)の期限を過ぎても支払いをしなかった場合、お客さんには何のペナルティもありません。
それに対して当社が受取手形を発行した場合、つまりお客さんにとって買掛金が支払手形になった場合、支払手形の期限を過ぎたら「手形の不渡り」になってしまいます。「手形の不渡り」が2回発生すると銀行取引が停止され、倒産する可能性があります。
そのため、当社は確実に売上代金を回収したい場合、売掛金を受取手形に変える、自己受為替手形を使うのです。
まとめ
自己宛為替手形 支払手形が増加
自己受為替手形
振り出し → 受取手形が増加
引き受け → 支払手形が増加